風神貫
これは初学の抜刀技法です。
拳を前に出さずに抜刀する変形抜(へんけいぬき)でもあります。
楷書(守)での抜刀
風神貫(ふうじんぬき)の解説を致します。
その前に、風神貫の由来について説明します。
風神とは、日本の古来から伝わる風を司る神様のことです。
画像に出ている通り、風神は袋を身体に巻き付けて持っています。
この袋を持っている姿が、風神貫を行う際の刀の軌道を表しています。
一、風神の持つ袋の如く、刀は軌道を描く
そして風神が持っている袋を刀で突き刺すと、風が袋から物凄い勢いで出てきます。これが風神貫の切るときの動作を表現しています。
一、風神の起こす凄まじい風のように鋭く抜刀して切る
そして、風神貫を行うとき、相手の喉を切ります。相手の喉笛を切ると、空気が出てきます。これも、先ほどの風神が持っている袋を刀で突くと袋から風が出る、という表現と重なっています。
一、風神の袋を突くと空気が漏れるように、喉笛を切ると息が喉から漏れる
これらのことから、この技法を風神貫と呼びます。
風神貫の解説を致します。
初学のパターンについて説明致します。
最初に左手で刀を上に持ち上げます。
この時、刀の鍔は自分の顎の高さまで来るように持っていきます。
次に刀の柄に手を掛け、鯉口を切り、鞘引きをしていきます。
鞘はしっかりと下まで下ろすようにしてください。
刀を抜いていき、刀の切っ先を左から右に後方から回し、つま先立ちつつ、肘を伸ばしながら、右手の刀の握りとともに、やや半身をとりながら、相手の喉を切っていきます。
切り終わったのち、肩掛(かたがけ)の位を取ります。
刀を返し、左肩に刀の峰を乗せます。柄頭が自分の鳩尾に来るようにしてください。
そして残心をとります。臨(りん)・兵(ぴょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(じん)・烈(れつ)・在(ざい)・前(ぜん)と九字を頭の中で唱え、青眼の位を取ります。
そのあとの血振るいと納刀は定めがありません。
狭い場所で用いる技法では転柄血振るいが良いです。そのため、ここでは転柄血振るいを行います。その後、逆手納刀を行います。
横からご覧ください。
刀を上げ、右手を柄に掛け、鞘を引き、やや右手を上げます。
このとき、通常の抜刀のように肘を伸ばすようにしてはいけません。
鞘引きをし、肘の曲がりを出来る限り維持したまま抜刀するようにしてください。
右手の位置は自分の頭頂部辺りにきます。刀の切っ先を左から右に後方から回し、そしてこの位置にもっていきます。
この時の右手の高さは、おおよそ自分の額の高さと同じです。
そこからつま先立ちになりながら、相手の喉を切っていきます。
このとき気を付けるべき点は、刀の切っ先は下げますが、自分の拳は下げてはいけません。あくまでも、刀の切っ先のみを下げて、相手の喉を切るようにして下さい。切った後に、左肩にて肩掛の位を取ります。
ここから残心を取ります。九字を唱え、青眼の位を取り、後は先ほどの流れの通りです。転柄血振るいを行い、そして逆手納刀を行います。
風神貫の守(しゅ)の動きについて説明していきます。
守の動きは、先ほど説明したように、刀を上げて、鞘引きをし、刀を抜いていく、という動作ではなく、刀を上げる、刀を抜く、という動作を同時に行います。すなわち、このように同時に行いながら、風神貫の動作を行います。
守の場合は一拍で動作を行っていきます。そのため、動作を速く行おうとするあまり、このように刀の切っ先がやや上がりがちになります。そうではなく、肘の曲がりを保つ、刀の切っ先を下げる、これらを守ったまま、一拍の動作で風神貫の動作を行えるようにして下さい。
草書(離)での抜刀

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