居相腰

天心流には扇坐(おうぎざ)の体勢から居合腰(いあいごし)となる技法が多数存在します。
従ってこれは極めて重要な基礎動作であると言えます。
しかし床座文化(ゆかざぶんか)から離れた現代人にとっては決して容易な動作ではありません。
そのため扇坐より居相腰となる動作のみを抜き出した稽古法を紹介します。
なおこれは伝統的な稽古法ではありません。

代表的な使用例

まず初学者が最初に居相腰を用いるのが柄打(つかうち)でしょう。
刀を取って両膝を閉じて跪坐(きざ。つま先立ちの姿勢)になります。
そして
右足を前に大きく出して柄打を行います。
前足を進めた際には、後ろ膝を残さず前足踵まで寄せます。
この動作を
寄せ足、または進み足と呼びます。
この片膝を立てた姿勢が天心流で居相腰と呼ばれる姿勢です。
注意点としては、楷書(かいしょ)では出来るだけ踵を高く浮かせてつま先立ちとなります。脛と足の甲が一直線となる程を目安とします。そして膝を出来るだけ高く上げます。
また居相腰の際、上体、腰の角度によって、後ろ脛の角度が変化する事に注意して下さい。
半身(はんみ)になるほど、後ろの脛は真横を向くようになります
居相腰の際に対面となる場合は、後ろの脛はまっすぐになります。

動作解説

  1. 扇坐からまず両膝を閉じます。
  2. 腰を浮かせて、つま先立ちとなります。
  3. 右足(ないしは左足)を前に大きく出します。
  4. そして後ろの膝を前に進めます。
  5. この居相腰の姿勢をしばし維持します

反復稽古

扇坐から居相腰に変化し、また扇坐で坐ります。これをひたすら繰り返します。
広ければ同じ方向に続けて行い、狭い場合は振り向いて逆向きに坐して、折り返し行います。
左右いずれも行うと良いでしょう。

一拍での稽古

動作に慣れて来たら、草書)の一拍で稽古を行います。
一挙動で膝を閉じつつ浮かせます。そのまま右足を出して、寄せ足を行います。

終わりに

こうした部分練習は、地味でつまらないかもしれませんが、身体機能の強化拡張に不可欠です。
一見遠回りですが、その実、もっとも効率的な上達法になります。
確かに技法一連の動作すべてを行わないと、技法を流れとして身につけることは出来ません。ですが不慣れな段階で、複数の修正点に取り組むのは、マルチタスクが苦手な人間にとって、効果的ではありません。

回数に定めはありませんが、一度に20回を1セットとして2セットほど行うと良いでしょう。
楷書(守)と草書(離)の二段階を両方行うとより効果的です。
天心流には多くの技法・稽古法があるので、同じ基本を毎日行うよりも、週に一回など折に触れて行うと、バランスよく身体機能と技術を身につけることが出来ます。

それではまた次のテーマでお会いしましょう。

 

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