膝返

今回の課題は膝返(ひざがえし)或いは膝割(ひざわり)と呼ばれる稽古法です。

特に坐法で必要な体捌きを身につけると同時に、足腰の鍛錬を目的としています。

動作は折敷、立膝の姿勢から、膝を入れ替えるという単純なものですが、床座の暮らしから離れた現代人にとって、非常にきつい稽古法です。

 

しかし天心流に伝わる「土台を固めて城築け」という言葉が示すように、多くの技法の基礎となる身体機能を培う重要な稽古法です。

 

■分割しての膝返

 

■手順

 

まず結び立ちより、腰を下ろし片膝を突いて折敷となります。

立てた膝を前に下ろして突き、もう一方の膝を横に開いて立てて半身となります。

この動作を左右繰り返します。

 

■注意点

1、足幅について

両足を開いた状態から座ってしまうと、折敷の際にも両足が開いて、立膝が低くなりやすくなります。

また重心が大きく左右にズレてしまい不安定となり、膝返の動作も遅れてしまいます。

 

2、踵とお尻について

膝を突いた側の踵の上に、お尻を載せます。

お尻を浮かさないように注意して下さい。

 

3、膝の高さについて

膝は出来るかぎり高く上げます。

目安は膝頭が胸の下部辺りの高さに来る程です。

 

踵を出来るだけ高く上げつま先を立てて、足の甲と脛(すね)が一直線になる程にします。

 

膝の正しい高さを理解し、膝をより高くするために、両手で膝を抱えストレッチを行うと良いでしょう。

 

また最初から直接膝を横に開くと、膝が低くなりやすくなります。

そのため矯正方法として、膝を真っ直ぐに胸に引き寄せるつもりで上げ、その後膝を横に開くと良いでしょう。

膝を下ろす際にも、身体に引き寄せるようにしながら下ろします。

 

4、脚の角度について

両脚の角度はおよそ90°です。

前脚は正面よりわずかに開きます。そのため横に開いた脚は真横よりやや閉じた角度となります。

 

このように前足を真っ直ぐ正面に向けないように注意して下さい。

後脚も真横を向きません。

 

5、身体の軸について

上体は基本的に常時垂直を維持します。

左右に傾くことがないように注意して下さい。

 

特に横から見た際に、前傾しないように注意します。

誤った例として常時前傾してしまう場合と、膝を突く度に前傾してしまう場合があります。

 

頭の上に、水の入ったお皿を載せているつもりで行うようにして下さい。

(実際に行ってみても良いでしょう)

 

6、顔の向きについて

これはあらゆる動作に関係しますが、身体を陰陽(右左)に捩(ひね)る際に、顔は正面(対者)を向くように維持します。

 

目線だけを正面(対者)に向けると、頭部は上体と一緒に陰陽(右左)に動いてしまいます。

 

これを矯正する方法として、両手で頭部を固定して膝返を行うと良いでしょう。

 

7、手の形と位置について

多少手の形は崩れても構いませんが、基本的に両手は開手とします。

そして両手の位置は、基本的に膝の辺りに置きます。

 

■次の段階 一拍での膝返

 

慣れてきたら、次の段階として一拍で両膝を入れ替えます。

注意点などは、分割した膝返しと基本的に同様です。

 

■終わりに

膝返という名称ですが、実際に重要なことは、骨盤を陰陽に返すことです。

脚を左右に開こうとすると、筋肉への負担が大きくなりますが、骨盤を意識して行うと、非常に楽に膝返が行えます。

 

またこれは膝返だけに限らず天心流全般に言えることですが、足首の柔軟性が求められます。

足首のストレッチなど行うようにして下さい。

 

回数に定めはありませんが、一度に30回を1セットとして3セットほど行うと良いでしょう。

ただし、くれぐれも無理は禁物です。

膝、足首など違和感を覚えたら中止するようにして下さい。

天心流には多くの技法・稽古法があるので、毎日行うよりも、週に一回など折に触れて行うと、バランスよく身体機能と技術を身につけることが出来ます。

 

コメント