切り下ろし時の姿勢
腰を前に突き出すようにして、頭を引いて背を反らせて上体を後傾させます。
離(草書)の際には、ほぼ上体は垂直となりますが、守(楷書)では必ず後傾するようにしてください。
また後傾する時、頭部も後ろに引くようにして、前に出ないように注意して下さい。
足の形について
切り下ろしの際には、両膝を曲げつつ外側に大きく開き、両つま先を出来るだけ立てます。
開脚と膝の屈曲、足首の底屈とその連動は天心流の足運びの基礎となる重要な運動です。
上体を起こし、両膝を曲げると、自然とつま先立ちとなります。
足首の力で無理やり踵を上げるわけではありません。
離の場合は、両膝の曲げる角度と開く角度、つま先の立て方は緩やかになります。
剣の軌道と前腕と剣の角度
面を切り下ろす時には、手首は返しません。面を切った後に、手首を返します(膝腰)。
面を切る前から手首を返すと切れません。
切断の際に重要なのは刃物と対象の角度です。刃物と対象の接点が常にスライドするのが
理想になります。

刃物の軌道が直線に近いと、切断対象面に直角に近い角度となり、押すような切り方になります。

※そうした切り方を天心流では抑え切りと呼び「切り分け」として用いる場合もあります。
また切り下ろし時には、前腕と刀が一直線になります。
切り下ろし時の切っ先について
切り下ろした時、切っ先は一瞬止まるように意識します。
これはあくまでも「止まる」のであり、腕力を使って切っ先を無理やり止めるのではありません。
青眼に戻る時、切っ先が跳ねるのは刀を制御出来ていない証左となります。
切り下ろし後、即座に青眼に戻るのは、動きが固定され次の動作に移れない「死気体(しきたい)」とならないためです。
対者の動きを見定め、次の手を判断する上で非常に重要となります。
足の開き方
切り下ろし後、両足を開いて馬上立となる際には左足、右足の順番で均一に開きます。
初心者がやってしまうのは、ジャンプして両足を開くことと、片足だけを開くことです。
■ 応用 ; 袈裟懸け
慣れるに従い、袈裟懸けで切り下ろす稽古も行います。
抜刀等、大きく異なる点はありませんが、挙上の際に両拳の位置が、陰(右)から左(陽)に切り下ろす際は右こめかみの上辺りとなり、左(陽)から陰(右)に切り下ろす際には左こめかみの上辺りとなります。
■ 終わりに
人生でこれほどまでにガニ股なることがあるだろうかという程に両膝を開く技法です。
見た目の悪さと姿勢のキツさも相まって、敬遠される技法のひとつです。
しかし抜刀のいろはから、脚部の働き、刀の振り下ろしに至るまで基本が凝縮されている重要で有用な技法です。
特に守(楷書)の稽古では、礼法、手を掛ける、抜刀、柄に左手を掛ける、刀を振り下ろす、青眼に戻る…と明確に区切って丁寧に動作をなぞるようにして下さい。

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