着付け
今回は着付けの方法について解説をしていきます。
全て揃えている必要はないですが、着ていく順番通りに一通り説明していきます。
この姿、格好は撮影のためのものですが、上にTシャツなどを着ても構いませんし、持っている方は襦袢(じゅばん)を着ても構いません。
まず足袋(たび)を履きます。
全ての着付けは左から行います。これは昔からの作法であり、特にはっきりとしたこれという理由はありません。しっかりと足を足袋の中に入れて、小鉤(こはぜ)を下からはめていきます。小鉤ではなくマジックテープを使っている足袋もあり、それだと簡単だと思います。小鉤をはめていくという動作も慣れるまでは難しいです。必ず左足から足袋を履いていくことに注意してください。
次に長襦袢(ながじゅばん)を着ます。なお、普通の稽古着を着る場合はこのように羽織ります。稽古着に紐がついている場合はこのように結びます。大事な点として、稽古着にせよ、着物にせよ、必ず右側の布地を先に自分の身体に密着させるように、すなわち「右前(みぎまえ)」になるように着ます。
これを反対の「左前(ひだりまえ)」にすると、葬式の時などに着る方法となりますので、必ず右、左と順番を守るようにして下さい。
それでは長襦袢を着ていきます。
左袖、右袖の順番に腕を通します。そして襦袢を右前になるように身体に合わせます。
ここで紐を腰に結び付ける場合もあります。
長着(ながぎ)を着ていきます。
長着も長襦袢と同様です。まず背に長着を羽織ります。
次に左袖、右袖の順番に腕を通します。
そしてもう一度襦袢を右前になるように身体に合わせ、次に長着を右前になるように身体に合わせます。
このとき、長着の両方の襟の長さを揃えてから、長着を身体に合わせていくと良いでしょう。
一文字結び(いちもんじむすび)という帯の結び方を説明していきます。
帯の端を25cmから30cmほど縦半分に折ります。これを手先(てさき)と呼びます。
帯の巻き方は左巻きの関東巻(かんとうまき)、右巻きの関西巻(かんさいまき)があります。天心流では左巻きの関東巻を基本的に使っています。
帯の手先の端を右腰に付けて、帯を三回巻きます。
そして垂れ先(たれさき)と呼ばれる帯の余りの下に手先が来るように交差し、垂れ先を下から通して上に持っていきます。おなかをややへこませながら、垂れ先と手先を引っ張り結びます。天心流では刀を差すときのために手の平1枚分ほど帯と身体に隙間を開けるように教えられています。
垂れ先と手先を引っ張り強く結んだあと、ここで垂れ先と手先を交差します。そして手先を右腕で押さえておきます。
垂れ先を20cm前後で横折していきます。全て折り終わったら、もう一度垂れ先と手先を引っ張り結び直すと良いでしょう。
そして手先で折り畳んだ垂れ先を下から上に巻いていきます。この後結ぶ場合もありますが、今回は簡易的に帯と帯の隙間に手先を差し込みます。
羽(はね)と呼ばれるこの部分を折ると見栄えがよくなります。
袴で隠れてしまいますが、できるだけきれいに着るように心がけて下さい。
横から見たときに帯はやや前下がりになるようにして下さい。
帯の位置は骨盤より下になり、帯の上端に腰骨がくるようにします。
腰回りのくびれで帯を巻くようにすると刀を差すことに支障があり、また日本の着物を着る上での見栄えも良くありません。
帯を結び終わった後に、長着の前面と後面の皺を左右の端に寄せると奇麗に見えますので、そのような細かい所作にも注意して行って下さい。
続いて尻端折り(しりっぱしょり)です。先ほどの稽古着のような着丈が短い着物ですと必要ありませんが、長い着者ですと必要な所作です。長襦袢と長着の裾の端を帯の一番内側から下から上に通して引き上げます。
次は袴の履き方です。
正しく袴を畳んでいると瞬間的に解くことができます。
先ほどと同じように必ず左足から袴に通していきます。
そして袴の前部分を角帯の上にくるようにもっていきます。
他の流派では角帯を少し見せるようにするところもありますが、天心流では角帯を見せません。袴の前紐の部分がちょうど角帯からはみ出るようにします。
袴の両方の前紐を後ろに回し、背中で交差します。そしておなかをへこませながら強く両方の前紐を引っ張ります。
背中で交差した両方の袴紐を前にもっていき、右手で両方の前紐をひっぱりながら持ちます。次に、前紐が帯の羽の左部分で交差するように左手で調整します。
今度は右手から左手に持ち替えて両方の前紐をひっぱりながら持ちます。そして前紐が帯の羽の右部分で交差するように右手で調整します。このようにすることで、だんだんと前紐が上がってくることを防ぐことができます。
そして両方の前紐を前で交差していきますが、特に下の方で行うようにして下さい。
左の前紐が右の前紐の上に来るようにし、丹田(たんでん)の部分で交差します。そして、両方の前紐を縦に折り返し、床と平行になるように後ろにもっていき、背中側で蝶結びにします。
他の方法として、左腰で左の前紐だけ縦に折り返し、背中側で蝶結びにします。どちらの方法でも構いません。
次に背板を帯に載せます。たた帯の上に背板を載せるのではなく、帯の下に深く差し込むようにします。
袴の両方の後紐を前にもっていきます。左の後紐が右の後紐の上に来るようにし、全ての紐を絡めるように左の後紐を下から上に引き上げ、おなかをへこませながら強く引っ張ります。続いて今、左側にある後紐を全ての紐を絡めるように上から下に引き下げます。
紐の処理の仕方は様々ありますが、まず一文字結(いちもんじむすび)を紹介します。このように今右側に来ている後ろ紐を折りたたんでいき、最後、横の一文字の形にします。畳んだ時の幅は好みで、やや短めでも構いません。畳んだ紐が中央に来るようにした後、下に垂らしている後紐を全ての紐を絡めるように上から下に引き下げます。そして紐を余らせてこのように十字の形にすると十文字結(じゅうもんじむすび)と呼ばれる結び方になります。
しかし通常十文字結は外れやすい、という欠点がありますので、余った紐を自分の右腰にもっていき、袴紐に通して処理します。余った紐の長さが短いと見えてしまうので、適当な長さにして右腰に通して処理すると良いでしょう。
上の袴紐と下の袴紐の間に十分に空間が空いているようにすることが重要です。動いているうちに下の袴紐が上がってしまうかもしれませんが、まずはこのような形を作るように心がけて下さい。
袴の脇あき(わきあき)と呼ばれる空間から着物を整えます。
脇あきから着物がはみ出る、紐がはみ出ることのないように気を付けてください。
以上が着物の着方になります。
着物の着方は様々あり、それぞれ自分の着やすい方法があるかもしれません。慣れていくにつれて自分の着やすい方法で着ても構いませんし、既に着物を着ている方は今までの着方でも構いません。きちっとした着こなしであればそれで良いと思います。
我々は刀を差しますので、刀を差しているときに問題なく動けるか、刀が安定しているか、などが大事になりますので、そのようなことに注意して頂ければと思います。

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