守・破・離、楷書・行書・草書について
天心流を稽古していくにあたって必要な概念、理論的な部分について、説明いたします。
まず守(しゅ)・破(は)・離(り)、そして楷書(かいしょ)・行書(ぎょうしょ)・草書(そうしょ)という概念です。これら二つは類似しています。
もう一つは序(じょ)・破(は)・急(きゅう)という概念です。
守・破・離は一般的に修行の三段階を説明しています。
最初の「守」は基本的な稽古、教わったことを「守り」きちっと稽古を行うという段階となります。
2段階目の「破」は基礎となるもの、教えてもらったものを「破る」段階、すなわち自分なりに変化、アレンジを加えて変わっていく段階となります。
3段階目の「離」は教えから「離れて」、自らの独創的な世界へと歩んでいく段階となります。これが一般的に言われている守・破・離の説明になりますが、天心流ではあまりこの説明の意味では使われていません。どちらかといえば、この守・破・離はそのまま楷書・行書・草書と呼ばれる3段階の意味で使われることがあります。
これらが何の概念かといいますと、文字の概念になります。
楷書はしっかりとした形を保った文字で、行書はそれが崩れています。例えば「行」という文字で説明いたします。
これが楷書、きちっと形を保っています。
このきちっとした楷書がこのように崩れていき行書となり、
最後はこのようにより崩れた草書になるように、階に応じて文字が崩れていきます。
これが転じて、技についての教えとなっています。
守・破・離の概念と併せて考えることができます。
最初の段階の楷書もしくは守は基礎としてきちっとした形を学びます。これが基本的な教えにあたりますが、実際に草書もしくは離の形になると必ずしもこのような形ではなく、形の崩れた、教え通りに行わない、ということも生じていきます。
しかし、まず守の段階をしっかり守らなければ技が身につきません。また、離の段階で、応用変化で必要な動作が最初の守に含まれている場合があります。
したがって、守・楷書という1段階目は非常に重要なものとなります。
いつの段階で離に至るか、ですが、一般的な守・破・離の考え方ですと、10年、20年、30年経ったとしてもまだ守が大事であるという考えがあります。しかし天心流の場合ではこのようには考えず、早い段階から離・草書の形が重要であると考えます。何故なら、昔の武士は30年後に「闘え」と言われるのではないからです。明日「お役目を果たしてきなさい」と言われたときに技を用いることが出来なければ意味がありません。したがって、天心流を稽古していく際には、守・破・離のどの段階を稽古するのかを自ら考えていくこと、また三段階に渡って稽古をしていくことが大事です。
そのため、TENSHINRYU ONLINEの中でも、教えていることが守なのか、破なのか、あるいは離なのか、を区別しながら指導していきますので、これらの概念を理解しておいてください。
続きまして序(じょ)・破(は)・急(きゅう)という速度を表す3段階を説明いたします。非常に古い日本の考え方で、天心流では主に速度として考えています。
序はゆっくり、破は速く、急は実際の速度という意味になります。序、破、急という順番にだんだんと速くなっていきます。序・破・急は守・破・離の3段階と組み合わせて使われています。例えば、守・楷書、すなわちきちっとした形を、ゆっくり丁寧な「序」で行う場合もあれば、中程度の速さの「破」、実際に用いる最速の「急」で行う場合があります。
そして「離・草書」のような実際の想定の動きをしながら、ゆっくり丁寧な「序」から、中程度の速さの「破」、そして実際の速さである「急」で行う場合もあります。
天心流では「三本に一本」という言葉があり、これは三回の稽古で一つの組み合わせとするという意味です。つまり守・破・離の三段階を一本として稽古を行う、もしくは序・破・急の三段階を一本として稽古を行うなど、組み合わせて稽古をしていきます。
TENSHINRYU ONLINEでは基本的にまず守を徹底的に稽古し、ある程度稽古した後に次の破や離の段階に進んでいくというような形で稽古をしていきます。
守・破・離、あるいは楷書・行書・草書という概念、そして序・破・急という概念を理解しておいてください。口頭での説明だけではわかりにくいところがあるかもしれないので、英語と日本語の説明文も併せて読み、学習してください。

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