刀の扱いについて

刀の扱いについて

天心流を稽古するうえで、刀の扱い方も重要です。
今回は、刀の扱い方の中で特に注意しなければならないことについて、説明していきたいと思います。
刀を跨(また)がない事
では、悪い例をお見せ致します。
残念なことに、武道や武術を稽古されている人の中でも、先ほどのような刀を跨ぐ光景を見ることがあります。
どのような理由があれ、刀を跨ぐこと、それは許されません。
先ほど、便宜的に袋竹刀を跨ぎましたが、袋竹刀であれ、木刀であれ、跨ぐことは許されません。
日本の伝統文化の一つである天心流兵法を修行される皆さんには知ってほしいこととして、武具だけでなく、何かを跨ぐという行為は日本の風習では禁忌とされています。
日本の生活文化の一つとして床座文化というものがあります。それは、椅子やベッドなどを用いずに、床に直接座ったり、寝たりする生活様式です。
そのような場合、何か物を直接床に置くということが多くあり、その結果、物を跨いでしまう、あるいは人を跨いでしまうことが起こりがちです。
しかし、物や人を跨ぐことはその行為自体失礼ですし、跨ぐということは物や人を踏みつけてしまう危険性もあります。ですから、日本古来の文化として、何かを跨ぐということは禁忌とされています。
「物を跨いではならない」。このような観念は現代では廃れてきてしまっており、また往時でもそれが厳守されてきた、というわけではありません。往々にして何かを跨いでしまうことは多かったようです。
しかし武士を刀を跨いでしまったら、ただではすみません。実際に刀を跨いでしまったばかりに、刃傷沙汰になってしまった、という記録も残っています。何故なら、刀は武士の魂であり、刀を跨ぐという行為は、武士その本人を侮辱する行為になるからです。
そのため、皆さんも稽古の中では決して刀を跨がないようにして下さい。また、日常生活の中でも、刀以外に他の物も極力跨がないように気を付けて生活して頂ければと思います。
刀の置き方 - 壱 –
刀を壁際に置く際の注意点について説明します。
まず刃の向きです。刃の向きに注意して、ここにいる人に向けないように、刃を壁側に向けて置くようにして下さい。
次に、あちらに神棚があると仮定します。その場合、刀の切っ先に注意して置くようにして下さい。刀の切っ先を決して上座、あるいは神棚側に向けてはいけません。刀の切っ先をこのように上座から離れておくように刀の向きを変えて置くようにして下さい。
また、上座側、あるいは神棚の面には刀や他の荷物を置かないようにして下さい。先生方が荷物を置く場合はありますが、通常の場合は、刀や荷物を置かないように気を付けて下さい。
刀の置き方 - 弐 –
上座、あるいは神棚の正面に刀を置く際の注意点に説明します。
あちらに仮の神棚を用意しました。
そして、その正面に刀を置こうとします。その際、上座、神棚の中心線から右側に刀を置こうとする場合は、このように鐺が右側を向くようにします。
上座、神棚の中心線から左側に刀を置こうとする場合は、このように鐺が左側を向くようにします。
このような形です。
上座、あるいは神棚の真正面に刀を置かなければならない際は、鐺が右側を向くようにします。
もし、やむを得ず神棚のある側、神座(しんざ)に刀を置く場合は、他の壁側と異なり、刃を壁方向ではなく、内向きに置きます。
そして切っ先は神棚に向かわないように注意します。
神棚が無い場合は、目上の者が座る上座となります。この場合も刀の置き方は変わりません。
なお、上座は一般的に、入り口から最も遠い側面とされます。
以上が、刀を置く際の注意点です。実際の場合は臨機応変に対応して頂ければと思います。

 

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